外国為替の仕組みとその変動

外国為替取引の取引レートの決まり方

外国為替の取引レート(為替レート)はどのようにして決まるのでしょうか。基本的に外国為替取引は相対取引(取引するもの同士が直接取引)が基本です。取引する為替レートについてもお互いが合意すればいくらでもいいわけです。
しかしそれでは、参考になる価格が多すぎてよく分かりません。そこで、通常は「インターバンク市場」という銀行同士が取引する為替市場での為替レートを基準価格としています。

このインターバンク市場(外国為替市場)では、銀行やディーラーなどが為替の取引を行い、株式(株価)と同じように需要と供給により通貨同士の交換比率(為替レート)が決まるわけです。

外国為替市場ってどこにあるの?

外国為替市場については、大きく「インターバンク市場」と「対顧客市場」の二つがあります。これらには、東証大証のように特定の「取引所」があるのではなく、電話やインターネットなどを通じてそれぞれ二者の間で行われます。

インターバンク市場

銀行などの金融機関が取引しあう市場のことです。ニュースで読み上げられている為替相場はこのインターバンク市場で取引されている為替レートのことを指しています。このインターバンク市場に個人が入ることはできません。
取引時間はほぼ24時間です。厳密には東京外国為替市場は9時から17時の間の取引となるわけですが、東京の後はシンガポール、フランクフルト、ロンドン、ニューヨークというように外国でもインターバンク市場を通じて取引が行われるため、為替レートは24時間変動します。(日本時間の土曜朝~月曜朝までは各国市場が閉まるので取引は行われません)

対顧客市場

投資家や一般企業などが為替取引をする市場です。銀行などの金融機関と取引をする形になります。顧客は銀行が提示している為替レートで取引をすることになります。
取引可能時間は、取引相手である金融機関の定める時間です。銀行などの場合は9時~15時くらいまでとしているところが多いですが、最近では24時間取引できる金融機関も増えています。

インターバンク市場と対顧客市場のイメージは上の図のようになります。銀行同士が取引しあい為替レートが決定されるインターバンク市場と、その参加者である銀行と為替取引をする一般企業や個人投資家という形になります。

変動相場と固定相場

外国為替(通貨)では大きく変動相場を採用している通貨と固定相場を採用している通貨があります。日本などの先進国の通貨は基本的に変動相場を採用しており、市場の需給によって取引されるレートが変化します。
一方、固定相場の場合は、各国の通貨当局が為替市場に介入して為替レートの変更を原則上下1%の範囲内に抑えている通貨です。そのため、基本的に為替レートの変動はありません。発展途上国の通貨に多いですが、中国の人民元も切り上げは行っているものの、固定相場を維持しています。

どういった条件で為替レートは変動するの?

為替レートは需要と供給のバランスで変動すると説明しましたが実際にはどういった理由で変動するのでしょうか?

為替レートはそれぞれの国の経済力(通貨の強さ)を示すといわれています。円高になるということは少ない円で外国通貨と交換ができるということになります。つまり円の力が強くなるのです。
こうした為替レートの水準は様々な要因がからみますが、
金利
・経済力の強さ・成長性
・政治的安定さ
・実需
などが大きな要因といわれています。

 

為替レートはどうやって計算されているのか?

例えば、5つの通貨(円・米ドル・ユーロ・カナダドル・豪ドル)があり、それぞれが変動相場を採用しているとします。この場合、為替の取引レートは以下の組み合わせができます。

円-米ドル
     
円-ユーロ
米ドル-ユーロ
   
米ドル-カナダドル
ユーロ-カナダドル
 
円-豪ドル
米ドル-豪ドル
ユーロ-豪ドル
カナダドル-豪ドル

合計でなんと、10通りの組み合わせです。世界で取引されている通貨の数は5つなんてものではなく100を越えています。仮に100通貨の取引があるとすると(100×99÷2)=4950通りもの取引が必要になってきます。

そこで、外国為替取引においては米ドルを中心としたクロスレートにより取引が行われています。

クロスレートとは

クロスレートとは、ある基準通貨(米ドル)を基準に各国の取引レートを相対的に計算するという方法です。例えば、1ドル=100円で取引されており、1ドル=0.8ユーロで取引されているとすると、ドル=円 ドル=ユーロ よって 円=ユーロ というように代入して計算が可能です。

1ドル=100円
1ドル=0.8ユーロ
よって
0.8ユーロ=100円
1ユーロ=125円

上記のように計算します。こうすることで、各国の為替レートはドルをベースに取引レートを出すだけでよいので、取引の組み合わせは仮に100通貨の取引があれば100通りでよくなります。現在のところ、クロスレートの中心は米ドルとなっており、対米ドル以外の為替レートについては、クロスレートにより計算されています。

外国為替取引は、様々な国の通貨間で取引されます。そこで、ある通貨を基準としてクロス関係(マトリックス構造)で為替レートを計算する方法をクロスレートと呼びます。多くの場合、インターバンク市場では世界の基軸通貨である「米ドル」を中心に価格が決まりますが、それを分かりやすくするのがクロスレートです。